砂の上(『晶子詩篇全集』収録)

与謝野晶子

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「働く外は無いよ、」 「こんなに働いてゐるよ、僕達は、」 威勢のいい声が 頻りに聞える。 わたしは其声を目当に近寄つた。 薄暗い砂の上に寝そべつて、 煙草の煙を吹きながら、 五六人の男が おなじやうなことを言つてゐる。 わたしもしよざいが無いので、 「まつたくですね」と声を掛けた。 すると、学生らしい一人が 「君は感心な働き者だ、 女で居ながら、」 斯うわたしに言つた。 わたしはまだ働いたことも無いが、 褒められた嬉しさに 「お仲間よ」と言ひ返した。 けれども、目を挙げると、 その人達の塊の向うに、 夜の色を一層濃くして、 まつ黒黒と 大勢の人間が坐つてゐる。 みんな黙つて俯向き、 一秒の間も休まず、 力いつぱい、せつせと、 大きな網を編んでゐる。

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