与謝野晶子

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月、まどかな月、 永遠の処女のやうな月、 昭和八年の中秋の月。 昨夜まで三夜続けて見た月は 山に、湖上に、海に、 美くしい自然と 友情のなかで眺めた月、 そなたを観た私からは 百首の歌が流れて出た。 今夜の私は沈黙して居よう、 沈黙してそなたに聴かう。 そなたは雲を出て踊り、 そなたは雲に入つて歌ふ。 木犀の香はそなたの息、 竹のそよぎはそなたの衣ずれ。 ああ月よ、 そなたは私を迎へて かの高きへ引き上げる。 私は今、光る雲の上で、 そなたと遊んでゐる。

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