那須に病みて

与謝野晶子

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下つ毛の八溝の山を 高原の那須より見れば、 いと長く、はた、いと低し。 指さして人教ふらく、 かしここそ陸奥ざかひ、 いにしへの世の作者たち、 遠きをば現はすことに 白河の関を引きつれ、 その里は山の裾なり。 雪の日の斯かるけしきを 端近く出でて望めど、 昨日より病のあれば いにしへの世も身に沁まず、 今のことはた気疎くて、 みづからの目に見るものは、 今少し陸奥よりも、 白河の関よりも猶 遥かにて、雪いと白く、 ひた寒き、この世ならざる 国のさかひぞ。

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