ツウル市にて
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水に渇えた白緑の
ひろい麦生を、すと斜に
翔る燕のあわてもの、
何の使に急ぐのか、
よろこびあまる身のこなし。
続いて、さつと、またさつと、
生あたたかい南風
ロアルを越して吹く度に、
白楊の樹がさわさわと
待つてゐたよに身を揺る。
河底にゐた家鴨らは
岸へ上つて、アカシヤの
蔭にがやがや啼きわめき、
燕は遠く去つたのか、
もう麦畑に影も無い。
それは皆皆よい知らせ、
暫くの間に風は止み、
雨が降る、降る、ほそぼそと
金の糸やら絹の糸、
真珠の糸の雨が降る。
嬉しや、これが仏蘭西の
雨にわたしの濡れ初め。
軽い婦人服に、きやしやな靴、
ツウルの野辺の雛罌粟の
赤い小路を君と行き。
濡れよとままよ、濡れたらば、
わたしの帽のチウリツプ
いつそ色をば増しませう、
増さずば捨てて、代りには
野にある花を摘んで挿そ。
そして昔のカテドラル
あの下蔭で休みましよ。
雨が降る、降る、ほそぼそと
金の糸やら、絹の糸、
真珠の糸の雨が降る。
(ロアルは仏蘭西南部の河なり)
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