山房の雨

与謝野晶子

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    六甲苦楽園の雲華庵に宿りて 津の国の武庫の山辺の 高原の小松の上を、 細々と、つつましやかに、 歩みくる村雨のおと。 高原の庵に目ざめて、 猶しばし枕しながら、 そを聴けば静かに楽し、 初夏のあかつきの雨。 おそらくは、青き衣に、 水晶の靴を穿きつつ、 打むれて山に遊べる 谷の精、それか、あらぬか。 戸を開けて打見下ろせば、 しら雲の裳を曳きながら、 をちかたに遠ざかりゆく あかつきの山の村雨。

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