馬前の夢
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“Etre d' un si※(グレーブアクセント付きE小文字)cle entier la d' pensée et la vie,
※(アキュートアクセント付きE)mousser le poignard, d※(グレーブアクセント付きE小文字)courager l' envie,
※(アキュートアクセント付きE)branler, raffermer l' univers incertain,
Aux sinistres clartes de la foudre qui gronde,
Vingt fois contre les dieux jouer le sort du monde,
Quel reve !!! et ce fut ton destin !”
Lamartine : Nouvelles Meditations.
おほ空涵すわだの原
波間の星は影消えて
天地をこむる暗の色
暗を掠めて夜あらしは
時こそくれと狂ふなる
魔神の※ものすごや。
やがて降りくる雨の音
雨に答ふる波の音
銀山碎け飛び散りて
暗にもしるき汐烟り
白衣の幽鬼群がりて
よみに迷ふに似たるかな。
風雨いよ/\荒れ行きて
四大のあらび渾沌の
世の有樣もまのあたり、
夜の惱みをいやまして
雷車亂るゝ雲のへに
魔炎の光りたれか射る。
嗚呼すさまじの雨の夜
あらしも波も聲あげて
歌ひ弔へはなれ島
至尊の冠いたゞきし
かしらは今はうなだれて
かれはいまはの床にあり。
疵に惱みて砂原の
月に悲む荒獅子か
檣折れてわだつみに
沈み消行く大船か
紅蓮の焔しづまりて
雪に掩はるゝ死火山か。
馴れ來し邦を、とも人を、
隔てゝ遠き離れじま
都の春の一夢を
磯のあらしにさまさせて
氣は世を葢ほふますらをは
いまはの床に眠るかな。
名は一代の史をまとめ
身は全歐の權を統べ
嫉むを挫じき仇を撃ち
暗と光のおほ波を
世に注ぎしも二十年、
今はた狂ふ雨の夜
あらしに魂の迷はんと
思ひやかけし神ならで。
十萬の鐵馬アルベラ(一)の
あらしを蹴りて驅けし後
三千の精騎ルビコン(二)の
流亂して越えし後
彼に比べんものやたぞ
群山遠く下に見て
空に聳ゆるアルプスの
高きは君の名なる哉。
斷頭臺の血を灑ぐ
革命の波推しわけて
現はれいでしタイタンの
まばゆき光照らすとき
「民主自由」の聲いづこ
渦づく時世の高しほを
しばし隻手にとゞめけむ
猛きは君の威なるかな。
そら舞のぼる蛟龍の
黒雲集め雨を驅り
風に嘯き呼ぶがごと
山を震はせ海をほし
進める君が行先を
拒ぎとゞめしものやたぞ。
颶風の翼身に借りて
征塵高く蹴たつれば
脆く亂るゝマメリューク(三)
奔るを逐ふて呼ぶ聲に
四千餘年の幽魂は
覺めぬ巨塔の墓の下。
サン、ベルナア(四)の嶺高く
雪滿山を埋むれば
響きは凄しアバランチ
難きをしのぎ險を越え
見おろす大野草青く
馬は肥たりマレンゴウ(五)。
オーステリツ(六)の朝風に
同盟軍の旗高し
至尊の指揮に奮立つ
二十餘萬の墺魯軍
君の鋒先向ふとき
散りぬ嵐に葉のごとく。
イェーナ、ワグラム(七)雲暗し
フリードランド(八)風あらし
いかづち落つる砲彈の
渦卷く烟かきわけて
君がかざせる鷲の旗
飛電のつるぎ閃めけば
列王つちに膝つきて
見よもろ/\の國たみは
震ひどよめり海のごと。
セインの流靜かなる
岸の柳の淺みどり
みどりの空に聳立つ
凱旋門は高くとも
君のみいづに比べんや
みかどの還御壽ぎて
歡呼の聲は雷のごと
パリ滿城の春の歌。
花ひと時の香ににほふ
脆きはいづれ世の定め
富もほまれもみいづゐも
とはの契りをいかにせむ。
「不能」のもじを笑ひしも
嗚呼君遂に神ならず。
玉樓の春短くて
魚龍淋しき秋の水
花はうらがれ香は消え
ほまれの星も落行けば
君蓋世の勇いづこ
焔は狂ふモスコウ府
吹雪は亂るボロヂノウ(九)。
フランス國の金笏か
ロムバアデイの鐵冠か
全歐洲の大權か
榮華のはてと今ぞ見る
夕日の影はクレムリン(十)
なれが淋しき塔の上。
名殘りの光まばゆくも
雲をつんざき現はれし
ヲータアローの丘の上、
敗れも何か恨むべき
見ずやかなたの金獅像(十一)
語るは敵の勝ならで
君がいまはの勇みなり。
光りわたらぬ隈もなき
其常勝の劔折れて
獨り小じまの波枕
夜毎の夢もあかつきの
千鳥の聲にさめし時
君や悟れる「命なり」と。
「悟り」よいづれ「薄命」の
遂に受くべきあだし名か
月日は空にかゞやけど
塵の惱みをしづめ得じ
とはに光の消ゆるとも
盲目は見るを忘れんや。
夕幾度波の上
錦をひたし綾を布く
入日の影の消えし時
沖より寄する暮の色に
心の暗も打まぜて
君が無量の感いかに。
月日の流れ世のさだめ
返らぬ昔今更に
忍ぶ思の數/\は
たゞ大潮の湧くがごと
夜の黒幕の垂るゝごと
胸に逼ればくろがねの
猛き心も亂れずや。
惱む思を靜めむと
(謝せよ)歩みの音かろく
今こそ寄すれ死の影は
あはれいまはの床の上
まだしづまらぬ魂の
夢はいづこを驅くるらむ。
生れし里は波のいづこ
なれし都は雲の幾重
離れ小じまの雨の夜に
過ぎにし榮は火のごとく
いまはのあとは灰のごと
其喜も悲も
むくろと共に葬むりて
眠につけや夢もなく。
雨とあらしの樂のねに
こゝに有象の海恨み
惱める魂を導きて
かれに無象のかど開く、
苦む「影」に休みあれ
別るゝ魂に惠あれ
罪と惱みを葬りて
あゝ比なくかんばしき
ほまれは彼の墓にあれ。
(註)(一)アレキサンダー大王大に波斯軍を敗りし地
(二)ゴールの歸途セイザアの渡りし河
(三)ピラミツド戰爭に敗れし土兵
(四)アルプス山中の峻路、所謂セイント、ベルナードの險
(五)伊太利にあり、墺兵大敗せし戰塲
(六)墺魯の連合軍こゝに大敗す
(七)ワグラムに墺軍敗れ、イェーナに普軍敗る
(八)魯軍大敗の地、以上はナポレオンの最も光榮なる戰勝地なり
(九)征魯軍退陣の途、こゝに風雪の難初まる
(十)モスコウ府内の宮殿、ナポレオンこゝに陣を取る
(十一)ヲータアロウ丘上同盟軍凱勝の紀念として金獅の像を建つ
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