閑雅な食慾(『青猫』収録)

萩原朔太郎

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松林の中を歩いて あかるい氣分の珈琲店をみた。 遠く市街を離れたところで だれも訪づれてくるひとさへなく 林間の かくされた 追憶の夢の中の珈琲店である。 をとめは戀戀の羞をふくんで あけぼののやうに爽快な 別製の皿を運んでくる仕組 私はゆつたりとふほふくを取つて おむれつ ふらいの類を喰べた。 空には白い雲が浮んで たいそう閑雅な食慾である。

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