國定忠治の墓

萩原朔太郎

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わがこの村に來りし時 上州の蠶すでに終りて 農家みな冬の閾を閉したり。 太陽は埃に暗く 悽而たる竹藪の影 人生の貧しき慘苦を感ずるなり。 見よ 此處に無用の石 路傍の笹の風に吹かれて 無頼の眠りたる墓は立てり。 ああ我れ故郷に低徊して 此所に思へることは寂しきかな。 久遠に輪𢌞を斷絶するも ああかの荒寥たる平野の中 日月我れを投げうつて去り 意志するものを亡び盡せり。 いかんぞ殘生を新たにするも 冬の蕭條たる墓石の下に 汝はその認識をも無用とせむ。 ――上州國定村にて――

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