無用の書物

萩原朔太郎

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蒼白の人 路上に書物を賣れるを見たり。 肋骨みな瘠せ 軍鷄の如くに叫べるを聽く。 われはもと無用の人 これはもと無用の書物 一錢にて人に賣るべし。 冬近き日に袷をきて 非有の窮乏は酢えはてたり。 いかなれば涙を流して かくも黄色く古びたる紙頁の上に わが情熱するものを情熱しつつ 寂しき人生を語り續けん。 われの認識は空無にして われの所有は無價値に盡きたり。 買ふものはこれを買ふべし。 路上に行人は散らばり去り 烈風は砂を卷けども わが古き感情は叫びて止まず。 見よ! これは無用の書物 一錢にて人に賣るべし。

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