夢にみる空家の庭の祕密

萩原朔太郎

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

その空家の庭に生えこむものは松の木の類 びはの木 桃の木 まきの木 さざんか さくらの類 さかんな樹木 あたりにひろがる樹木の枝 またそのむらがる枝の葉かげに ぞくぞくと繁茂するところの植物 およそ しだ わらび ぜんまい もうせんごけの類 地べたいちめんに重なりあつて這ひまはる それら青いものの生命 それら青いもののさかんな生活 その空家の庭はいつも植物の日影になつて薄暗い ただかすかにながれるものは一筋の小川のみづ 夜も晝もさよさよと悲しくひくくながれる水の音 またじめじめとした垣根のあたり なめくぢ へび かへる とかげ類のぬたぬたとした氣味わるいすがたをみる。 さうしてこの幽邃な世界のうへに 夜は青じろい月の光がてらしてゐる 月の光は前栽の植込からしつとりとながれこむ。 あはれにしめやかな この深夜のふけてゆく思ひに心をかたむけ わたしの心は垣根にもたれて横笛を吹きすさぶ ああ このいろいろのもののかくされた祕密の生活 かぎりなく美しい影と 不思議なすがたの重なりあふところの世界 月光の中にうかびいづる羊齒 わらび 松の木の枝 なめくぢ へび とかげ類の無氣味な生活 ああ わたしの夢によくみる このひと住まぬ空家の庭の祕密と いつもその謎のとけやらぬおもむき深き幽邃のなつかしさよ。

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

夢にみる空家の庭の祕密の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

夢にみる空家の庭の祕密に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる