戀ぐさ

蒲原有明

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さにてはなきや昨日こそ 冬のあはれはこもりしか 古井のかげよ今日はまた 追憶深き草の花 追憶ふかき草なれば 菫やさしくにほふなり やさしく匂ふ花なれば そのこころさへ慧からむ されば知れりや歡樂の 泉にかかる琴のねを ここには誰ぞ彈きすてて 世はすががきのみだれのみ さてしも難きよろこびや かくも忘れし祕めごとや いやまし人は嘆く日に 匂ひは深き花すみれ 常磐の緑葉をかさね 森の香いかに高くとも 汝がにほはしのくちづけに われはかへじよ花すみれ 神のこころはほのかにて 人知る際にあらねども いくよ忘れし思ひさへ ただこの花に忍ばるる げに世は夢よ歡樂の 泉はつきてかへらねど 古井のかげの戀草に なほ新しきにほひあらずや

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