山上の石

加藤介春

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或る日山にのぼつた時、 あやまつておとした石は どこまでおちて行つたであらうか。 うすぐらい麓から、 はた谷ぞこから、 石は石のちからによつて 山上の神の世界へのぼると聞いた そのいたいけな石の一つ。 やうやくのぼつて神に祈りをつゞけてゐた しづかなる石の一つは今、 眼もくらみ、 こゝろも遠くなるばかり いつさんにころんで行つた。 眼のまへにあるものゝ一つが、 ふとしたるちからによつて ゆくへ知れずになるといふことを ぢつと孝へる。 けがれたるにんげんの足にふまれた故に 167 石は石のちからをうしなうで 168 奈落の底へおちたであらうか、 それはおそろしい神の世界の出來事である。 それはおそろしい神の世界の出來事である、 おちた石はまたくらい麓から、 谷底から、 山上をしたうてのぼり行くであらうか。

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