山上の石
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或る日山にのぼつた時、
あやまつておとした石は
どこまでおちて行つたであらうか。
うすぐらい麓から、 はた谷ぞこから、
石は石のちからによつて
山上の神の世界へのぼると聞いた
そのいたいけな石の一つ。
やうやくのぼつて神に祈りをつゞけてゐた
しづかなる石の一つは今、
眼もくらみ、 こゝろも遠くなるばかり
いつさんにころんで行つた。
眼のまへにあるものゝ一つが、
ふとしたるちからによつて
ゆくへ知れずになるといふことを
ぢつと孝へる。
けがれたるにんげんの足にふまれた故に 167
石は石のちからをうしなうで 168
奈落の底へおちたであらうか、
それはおそろしい神の世界の出來事である。
それはおそろしい神の世界の出來事である、
おちた石はまたくらい麓から、 谷底から、
山上をしたうてのぼり行くであらうか。
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