赤き僧正

北原白秋

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邪宗の僧ぞ彷徨へる……瞳据ゑつつ、 黄昏の薬草園の外光に浮きいでながら、 赤々と毒のほめきの恐怖して、顫ひ戦く 陰影のそこはかとなきおぼろめき まへに、うしろに……さはあれど、月の光の 水の面なる葦のわか芽に顫ふ時。 あるは、靄ふる遠方の窓の硝子に ほの青きソロのピアノの咽ぶ時。 瞳据ゑつつ身動かず、長き僧服 爛壊する暗紅色のにほひしてただ暮れなやむ。 さて在るは、曩に吸ひたる Hachisch の毒のめぐりを待てるにか、 あるは劇しき歓楽の後の魔睡や忍ぶらむ。 手に持つは黒き梟 爛々と眼は光る…… ……そのすそに蟋蟀の啼く…… 四十一年十二月

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