元旦の夜のこと
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あな踈忽、吐息いでたり。気にかけそ、何といふ事もあらぬを。また妻よ、焙じてむ玄米の茶を。来む春の話、水仙の話、やがて生れむ子のことなども話してむ。元旦のこの夜の深さ。山住の我らなるゆゑ、いついつとかはりは無けど、今日はまたとりわけて、とりわけてよろしかりけり。全く今しづかなりけり。今さらに何をかや云ふ。この夜さのこの安けさは神ぞただ守りますべき。心ゆくうれしさの中、我は唯詩を思ふなる、汝また差しのぞくなる。しづかなり、ただあはれなり。筆動く音のみぞする。身じろきの、息のみぞする。さてあらば夜も明けぬべし。あれ聴けよ、鶏啼くらしき。また聴けよ浪の音なる。二人ただかくて起きゐて、まこと今ただ二人なる。二人なるいのちの息のおのづから触れかよふかな。親しくもゆき通ふかな。蜜柑なと一つむきてむ。近々と火にむかひゐむ。またすこし炭つぎ足して、さて待たむ。二日の朝の海原の紅き日の出を。
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