はばたき

北原白秋

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聞けとある大海原のただなかは 終日重きあかがねの霧たちこめて ゆたゆたに濤こそうねれ、日輪は 凄まじ、黒き血の塊と焦げて暈めく。 みるかぎり赤道下の炎熱に 鉛のごとき鹹水は炎と燃えて、 海蛇の鎌首高く、たまたまに 煌めき、さてはづぶづぶと青く沈みぬ。 物なべて気懶し重し、わだのはら 溶けたゆたふ鬱憂のうねりに疲れ 夜のごとも深まる吐息。しかすがに、 大寂静の空高く濃霧をわけて 東より霊智の光しらしらと 見え、かつ、消えぬ、大鳥の強きはばたき。

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