秘密

北原白秋

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桑の果の赤きものかげより、午後の水面は光り 奇異なる新らしき生活に蛙らはとんぼがへりす。 ねばれる蛇の卵見ゆ、かつは臭のくさければ *ガメノシユブタケ顰めつつ毛根を水に顫はす。………… かなたこなたに咲く花は水ヒアシンス、 その紫に蜻蛉ゐてなにか凝視むれ、一心に。 そのとき、われは桑の果の赤きかげより、 祭日の太皷の囃子厭はしく、わが外の世をば隙見しぬ。 かの銀箔の歎きこそ魔法つかひの吐息なれ、 皮膚の痛みにえも鳴かぬ蛙の、あはれ、宙がへり。 かかる日にこそわが父母を、かかる日にこそ、 眞實ならずと來て告げむ *OMIKA の婆に心おびゆる。 1. Omika の婆。Omika と呼ぶ狂氣の老婆なり。つねにわが酒倉に來てこの酒倉はわがものぞ、この酒もわがものぞ、Tonka John 汝もわがものぞ。汝の父母と懷かしむ彼やつらは全く赤の他人にてわれこそは汝が母ぞよ。われを見て脅かしぬ。 2. ガメノシユブタ。水草の一種、方言。

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