かりそめのなやみ
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ゆく春のかりそめのなやみゆゑ
びいどろの薄き罎に
肉桂水を入れて欲し、
カステラの欲し。
鉛の汽車の玩具は
紫の目に痛し。
銀紙を透かせば黒し、
わが乳母の乳くびも汚なし。
硝子戸に日の射せば
ザボンの白い花ちりかかり、
なんとなう温かうして心空腹じ。
カステラをふくみつつ、その黄いろなる、
われはかの君をぞ思ふ、
柔かき手のひらのなつかし。
小さきその肩のなつかし。
かかる日に、かかる日に、
からし菜の果をとりて泣く人の
その肩に手を置きて、
手を置きて、ただ何となく寄り添ひてまし。
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