汽車のにほひ

北原白秋

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汽車が來た、――釣鐘草のそばに、 何時も羽蟻が飛び、 黄色い日があたる。 JOHN は母上と人力車に。―― 頭のうへのシグナルがカタリと下る。面白いな。 もうと啼く牛のこゑ、 停車場の方に白い夏服が光り、 激しい大麥の臭のなかを、 汽車が來る…………眞黒な鐵の汗の 靜まらぬとどろき、とどろき、とどろき………… 汽車が奔る…………眞面目な兩の眼玉から 向日葵見たいに夕日を照りかへし、 焦れつたいやうな、泣くやうな、變に熱い噎を吹きつける。 油じみた皮膚のお化の 西洋のとどろき、とどろき、とどろき、とどろき………… 汽車が消ゆる…………ほつと息をして 釣鐘草が汗をたらし、 生れ變つたやうな日光のなかに、 停つた人力車が動き出すと、 赤い手をしたシグナルがカタリと上る。面白いな。

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