胡瓜
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そのにほひなどか忘れむ。
ほのじろき胡瓜の花よ。
そのひと日、かげにかくれて
わが見てし胡瓜の花よ。
かの日には歌舞伎見るとて
父上にせがみまつりき。
そがために小さき兄弟
日をひと日家を追はれき。
弟は水の邊に立ち、
聲あげて泣きもいでしか。
われははた胡瓜の棚に
身をひそめすすり泣きしき。
かくしても幼き涙
頬にくゆるしばしがほどぞ、
珍らなる新らしき香に
うち噎びなべて忘れつ。
さあれ、かの痛らき父の眼
たまたまに思ひいでつつ、
日をひと日、泣きも疲れて
數へ見てし胡瓜の花よ。
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