森の奥

北原白秋

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森の奥ほのかにくらし。 夏のすゑ、長月はじめ、 あはれ、日も薄らうすらに、 薄黄なる歎沁みゆく 浮羅爛勤の広葉の青み、 あるはまた大木の胡桃、 憂愁のかげのふかみに、 燃えのこる熱き日ざしは 黄に透かし暮れて薫れる。 そのなかに妙にしづかに 物おもふ白馬のあかり。 それやはた、夏の日の神 夕ぐれに騎りやわすれし。 紅の手綱の色も、 白がねの鐙も、鞍も、 いとほのに夢の照妙 ただ白し、ほのかに白し。 そをめぐり秋の笙の音 蕭やかにひそかに愁ふ。 響かふは角の音色か、 病める果か、饐えゆく歌か。 かくてまた暗き葉越に 鳩の笛沁みはわたれど。 薄黄なる光の透かし、 ひとすぢの昨のほめきに、 ほの白う暮れてたたずむ 物おもふ色のしづけさ。 森はいまほのかにくらし。

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