隣りの屋根

北原白秋

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夕まぐれ、たれこめて珈琲のにほひに噎び、 古ぼけし和蘭陀自鳴鐘取りおろし拭きつつあれば 黄に光るザボンの實ぽつかりと夕日に浮び、 黒猫はひそやかにそのかげをゆく………… あたたかき足跡のつづきゆく瓦の塵よ。 風重きかの屋根に香濃き艸こそなけれ。 晷りゆく日のあゆみたまゆらに明ると見つつ、 過ぎし日のやるせなき思ひ出はまた晷りゆく。

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