牛
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うつくしさ、さびさびしさ、
ああ、このしづけさ、
小舟はゆく、沼のおもてを、――
夕凪の安らかな乳金色。
小舟にはおつとりと、赤の雌牛が、
(なんといふよい画面)
おとなしく乗っけられてる、
うつぶした明るい姿。
むつまじさ、かざりなさ、
ああ、このしづけさ。
娘は棹をあげ、また、さしつぎ、
親たちはかがんでゐる、耕作のよい疲れで。
めづらしいよい日和だ、あるかなしに、
葦の穂さきに微塵が光つて、
沼のながめが広うなれば、
むぐっちょが鳴く。何かの芽立に噎せる。
ものがなしさ、温とさ、
ああ、このしづけさ。
春あさい大きな落日、
遥かな、寂びた藁屋根、立枯れ楊。
すべてはよい照らしにある、雌牛の
安らかな深い眼つきに宿る。
ああ、この親しさ、かたじけなさ、
すべては明るい祈りにある。
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