浴室
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水落つ、たたと………浴室の真白き湯壺
大理石の苦悩に湯気ぞたちのぼる。
硝子の外の濁川、日にあかあかと
小蒸汽の船腹光るひとみぎり、太鼓ぞ鳴れる。
水落つ、たたと………‥灰色の亜鉛の屋根の
繋留所、わが窓近き陰鬱に
行徳ゆきの人はいま見つつ声なし、
川むかひ、黄褐色の雲のもと、太皷ぞ鳴れる。
水落つ、たたと…………両国の大吊橋は
うち煤け、上手斜に日を浴びて、
色薄黄ばみ、はた重く、ちやるめらまじり
忙しげに夜に入る子らが身の運び、太皷ぞ鳴れる。
水落つ、たたと…………もの甘く、あるひは赤く、
うらわかきわれの素肌に沁みきたる
鉄のにほひと、腐れゆく石鹸のしぶき。
水面には荷足の暮れて呼ぶ声す、太皷ぞ鳴れる。
水落つ、たたと…………たたとあな音色柔らに、
大理石の苦悩に湯気は濃く、温るく、
鈍きどよみと外光のなまめく靄に
疲れゆく赤き都会のらうたげさ、太皷ぞ鳴れる。
四十一年八月
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