和蘭陀石竹のかげに

高祖保

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

一 ペン  ペンをとらなければならない。ささくれたペンを。孤独がわたしに命じた。書け、と。あの五月の闇の蕭やかさのなかで書いた、いくつかのもの欲しげな、独居の詩。辛うじて、それでも書きとめてきたのだ。わたしは。――「天使園の薔薇」だの「乖離」、「哀訴」だの、それに、「Sine qua non」だのと。 (しかしそれらの中に沈んでゐるのは、孤独の滓ではない。ひどく華やいだ、むしろ孤独怡悦の神の、――隠微な擬態だつたやうだ)孤独よ、これは宥せ。 二 検索  かりに額に掌をさしあてて、呟いてみた。 …「百舎重※して来る」  すると孤独は、そのやうに、遠方にあると思はれもする。孤独は鹹つぱくて、岩塩かなんぞのやうに手荒くある。実験室の甘汞よりも、もつと白いものであるかもしれぬ。――ゆふぐれの中で、求道者の匂ひの漂ふ、和蘭陀石竹。翳つた邈漠たる、その色。そこらあたりに、ひよつこり彳んでゐるのかもしれない。孤独は。  憗ひに、詩のなかに姿をおとすときは、はなはだ書割のとぼしい、間遠な姿の、うそ寒いものばかり。わたしの孤独よ。(おまへはそれに似てゐる) 三 烟草のから  水に涵つた桃林を、人は雨外套の襟をたてて足ばやに、暗いはうへ消えていつた。  その後姿に、薫ゆらすとみえた、紫煙のけむの一片。それが白い。ぽんと、抛げすてられたその殻。地におちて、なほ燻る余燼。――もはや夜の大地が、こんな小つぽけな烟草を薫ゆらせてゐると、みえないことはない。

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

和蘭陀石竹のかげにの談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

和蘭陀石竹のかげにに寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる