鶯
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夜更け。
暖炉のめぐりの、あのあかるい温気。
けきよ、けきよ、けきよ、けきよ。その温気のなかを、籠から、鶯が啼く…
すこし酸味のかつた終電車の軋り。外では白い微粉が片明りして、軒のあかしを朧ろに、それが、なにか十二月だといふ身についた落ちつきで、靡いてゐる。――なにかを、鎧扉に囁きながら。
暖炉のうへの硝子時計。
壁の一角に磔刑られて、そのまんま年老いたマリイ・マグダレン。そして、その肩さきの、雪。
けきよ、けきよ。……鶯の啼くこと、ふたこゑばかり。恍惚となる閑けさ。――聖母像はゐない。架上の基督だけが、弱々しげに咳き込む。⦅けふは、あなた、クリスマス・イヴなんですよ⦆紅茶のスプンの「ちん」と鳴る音。――
澱んでゐた夜が、その音に思ひついて、せつせと闌けてゆく。風信子のあさい欠伸。
けきよ、けきよ、けきよ、けきよ。
鈴懸並木のあちら側では、雪の道を拾ひあるきに、――鶯の口倣ねしながら、それ、誰かがあるいてゆく…
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