一本木野

宮沢賢治

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松がいきなり明るくなつて のはらがぱつとひらければ かぎりなくかぎりなくかれくさは日に燃え 電信ばしらはやさしく白い碍子をつらね ベーリング市までつづくとおもはれる すみわたる海蒼の天と きよめられるひとのねがひ からまつはふたたびわかやいで萌え 幻聴の透明なひばり 七時雨の青い起伏は また心象のなかにも起伏し ひとむらのやなぎ木立は ボルガのきしのそのやなぎ 天椀の孔雀石にひそまり 薬師岱赭のきびしくするどいもりあがり 火口の雪は皺ごと刻み くらかけのびんかんな稜は 青ぞらに星雲をあげる    (おい かしは     てめいのあだなを     やまのたばこの木つていふつてのはほんたうか) こんなあかるい穹窿と草を はんにちゆつくりあるくことは いつたいなんといふおんけいだらう わたくしはそれをはりつけとでもとりかへる こひびととひとめみることでさへさうでないか    (おい やまのたばこの木     あんまりへんなをどりをやると     未来派だつていはれるぜ) わたくしは森やのはらのこひびと 蘆のあひだをがさがさ行けば つつましく折られたみどりいろの通信は いつかぽけつとにはひつてゐるし はやしのくらいとこをあるいてゐると 三日月がたのくちびるのあとで 肱やずぼんがいつぱいになる (一九二三、一〇、二八)

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