松の針

宮沢賢治

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  さつきのみぞれをとつてきた   あのきれいな松のえだだよ おお おまへはまるでとびつくやうに そのみどりの葉にあつい頬をあてる そんな植物性の青い針のなかに はげしく頬を刺させることは むさぼるやうにさへすることは どんなにわたくしたちをおどろかすことか そんなにまでもおまへは林へ行きたかつたのだ おまへがあんなにねつに燃され あせやいたみでもだえてゐるとき わたくしは日のてるとこでたのしくはたらいたり ほかのひとのことをかんがへながら森をあるいてゐた    ⦅*ああいい さつぱりした     まるで林のながさ来たよだ⦆ 鳥のやうに栗鼠のやうに おまへは林をしたつてゐた どんなにわたくしがうらやましかつたらう ああけふのうちにとほくへさらうとするいもうとよ ほんたうにおまへはひとりでいかうとするか わたくしにいつしよに行けとたのんでくれ 泣いてわたくしにさう言つてくれ   おまへの頬の けれども   なんといふけふのうつくしさよ   わたくしは緑のかやのうへにも   この新鮮な松のえだをおかう   いまに雫もおちるだらうし   そら   さはやかな   terpentineの匂もするだらう ⦅一九二二、一一、二七⦆

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