行人よ靴いだせ
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行人よ靴いだせ
行人よ靴いだせ
脂ぬり刷毛はかん
泥はらひ釘うたん
鋲うたん
革うたん
靴いだせ行人よ
行人よ靴いだせ
故郷の柳水にうなだれ
塵たかくジープは走れ
堀割にゆく舟を見ず
街衢みな平蕪
ボイラー赤く錆び
蛇管は草に渇きたり
ここにして筇つき停つな
巷路暮春の風
いかなれば聽くを須ゐん
天ひろく
眼はむなし
つばくらら肱をめぐりて
地にしける甍をかすむ
路はただ水に隨ひ
直としてすゑは青めり
わが昔中學に通ひし路なり
ゆくところ麥の穗はうれ
大根の花こぼれ散り
月見草あるは晝咲く
ああこれ狹斜の地歌舞の跡
綺語臙脂沈麝の薫り
婀娜たりや夢も亦…… 智慧の環の
見ればつとほぐれて走る蛇のうせてのち――
日は蝕と
日は蝕と人よぶ聲す
襤褸の子ものかげに天をあふげり
されどまた路傍の石にかしましく
行人よ靴いだせ
行人よ靴いだせ
脂ぬり刷毛はかん
絲かがり針ぬはん
鋲うたん
革うたん
靴いだせ行人よ
行人よ靴いだせ
あはれまたここも闇市
あてどなき喪家の犬か
えうもなきすゑの世をわれはゆきゆけ
ありとなし思出も亦
ジープただ北し南す
ふるさとの暮春の巷
………………………
行人よ靴いだせ
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