艸千里濱
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われ嘗てこの國を旅せしことあり
昧爽のこの山上に われ嘗て立ちしことあり
肥の國の大阿蘇の山
裾野には青艸しげり
尾上には煙なびかふ 山の姿は
そのかみの日にもかはらず
環なす外輪山は
今日もかも
思出の藍にかげろふ
うつつなき眺めなるかな
しかはあれ
若き日のわれの希望と
二十年の月日と 友と
われをおきていづちゆきけむ
そのかみの思はれ人と
ゆく春のこの曇り日や
われひとり齡かたむき
はるばると旅をまた來つ
杖により四方をし眺む
肥の國の大阿蘇の山
駒あそぶ高原の牧
名もかなし艸千里濱
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