薄野

三好達治

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

薄の枯れたうらさみしい野みちだ むかふの方に堤防があつて 盜びとのやうにいやな奴が そのくせおれのなつかしい河が流れてゐる (それはもうさういふ羽目の辻占だ……) さうしてそいつはいつもかもしのび音に堤防の下の方を流れてゐる そこにはつまらぬ舟が浮んでつまらぬ漁師が日がな一日 河底の泥をすくつてゐる ありもしない獲もののかげをさがしもとめて 鴎もそこらにちらばつてゐる そのまたむかふの書割にはうすぼんやりと靄がかかつて こはれかかつた煙突が三本半ほどならんでゐる 何といふ腑拔けながらんどうの風景だらう どこに音樂のこゑがきこえるでもなし 河蒸汽一つ見えはしない こんな地方にまぎれこんできたおれの運命はいつたい何を考へることができるだらう ああいつさいが快活に眼ざめはしない 空想はしりからしりから消えてゆく階段のやうだし そこいらをうろついてゐるのは駱駝のやうな雲ばかりだ そいつもしりから消えてゆく 消えてゆく ほんたうに今日は陰氣ないやな日の暮れだ かうしてこいつはどこかへおれの運命をつれてゆくつもりでゐるのにちがひない 盜びとのやうに忍びあしで かうしてこの河が遠く遠く 枯れ枯れにす枯れてしまつた薄野を曲りくねつてゐるかぎり こんな風景のとりこでゐるかぎり おれはもう手摺のない暗い底ぬけの階段を しかたなく降りてゆくばかりだ

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

薄野の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

薄野に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる