淺草公園のなかにある寺

室生犀星

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公園の池にそうて 昆蟲館や水族館のある通りに向つたところに 何といふ寺かしらないが こんもりと緑深く陰氣に靜まつた石の塀がある その内部が非常にしづかで尼寺のやうな感じがする 活動館や食ひ物屋や露店にはさまれたこの寺だけは まつたく公園の空氣にふれないでゐるやうだ ジヤンバルジヤンが少女コゼツトを連れ込んだ尼寺みたいな氣がする 石の塀が苔蒸してあをあをしてゐる そこを通るたびに一種の空想を刺戟させられる とかげか何かのやうに つるりと石の塀を乘り越えてみたくなる 塀のうちになんだか尼さんのやうなものが居るやうだ それでなくとも何か特別の女がそこに居るやうな氣がする

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