万人の愛

室生犀星

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自分は夜更けてからも マリア像のある壁の前に座つてゐた 露西亜わたりの 厚い木地に張つた古いこの石版画の いぶし金の地に小さなキリストを抱いた 聖母マリアの白いひたひは美しかつた 己はしげしげ眺めては 永い間長椅子に座つてゐた くる晩もくる晩も自分はひとりきりであつた 自分はあらしのやうな孤独に襲はれてゐた 自分は聖母マリアの額に接吻をした 熱病人のやうな 苦しい目つきで 自分はいつまでも起きてゐた 夜はしづかで 雨さへふり出してゐた 自分は立つて又た接吻をした

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