合掌

室生犀星

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その一 坂はびろうど夕日炎炎 坂はみどりの下り坂、夕は祈りの鐘が鳴る その二 耶蘇は畑中ゆふぐれに われもゆふぐれ畑中に 葱はおとろゆ 夏の日に 耶蘇はものいふ われもいふ 畑はひかりて麦を吐き 耶蘇はゆふぐれ畑中に われもゆふぐれ畑中に その三 かうべ垂れ いまは緑を合掌す きびしき心となり みづからを責むる心となり 主よ山のふもとにわれ住みて すこし衰ろへ いまは緑の木木に その高きあたひに かうべ垂れ合掌す その四 むしけらのごとき ひとみのけがれ けがれしまま けふは知る 深きざんげのあたひを知る その五 みやこに住めど 心に繁る深き田舎の夏ぞ 日を追ひては深む いつくしみある地の夏ぞ その六 ながれに向ひ釣を垂る みなそこふかく ひそめるものに触れむとし 祈るがごとく釣を垂る 崖よりいまはなみだ垂れ 魚介のあなた ながれに感ず 波のおもみはきたる肩の上に 祈るがごとく釣を垂る

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