室生犀星

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きりきりと羽根を震はせると 蠅は美しい虹いろにかがやいた そして死んだまねをした 動かない ぢつとしてゐる 死んだのかも知れない 仰向けになつたままからだが光つてゐる 蠅はすてられた 地べたのうへに そこでは蟻の活動がはじまつてゐた 地上といはず 地下といはず たくさんの蟻がうづをまいてゐた 蠅はなかなか動かない 死んでしまつたのだらうと誰でも考へる あかるい夏の光が照つてゐる 蠅のからだにもどんどん光がそそがれ あたたまりが旺んにつたはつてゐる けれども動かない 蟻は木や草や家や あらゆるものを取りまいてゐる そして上れるものには皆のぼり あるけるところを皆歩いてゐる けれどもまだ蠅をしらない すてられた蠅はまだ死んでゐる しかし間もなく動くだらう ふしぎに默つて そして立つてゆくにちがひなからう

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