田舍
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田舍などの古い爐にゐる虫
冬は火のそばへまでくる虫
その虫は
あぶら虫に似てゐる
燻し金のやうな羽をもつてゐるが飛ばない
古い爐にかならず老人がゐる
老人は終日
爐べりを這ふむしをながめてゐる
田舍の冬の日の短かさは
やつと障子の高の一と棧だけ射して
音もなく消えてゆく
窓のそとは雪で一杯になつてゐる
ごとりといふ音もない
吹きさらしの風は雪を砥ぎすましてゐる
ただ黒いむしが爐のまはりを走つてゐる
ときには動かずにゐる
時計のむしに似てゐる
藁屋根はぬれて氷柱からしづくが落ち
しづくはちびりちびりと低い音を立てる
休んだかと思ふと またちびりと來る
退屈もそこでは死んでゐる
そこには半年のあひだ土を見られない
ただ一軒の家にひとりづつの
あるひは二人づつの老人がゐるだけである
煙草と茶と永い夜と雪と死と
かはるがはるに家家の戸口を叩いてくる
死は雪のなかに
茶は老人を冷やしてゐる
そとへ出たとて何があらう
露はな山と雪と
遠い太鼓のやうなひびきをもつ風が
谿あひ川のほとり往還の並木に潛んでゐるだけである
山一つ向うの小學校でなければ正確な時計一つない
みな家家の柱の時計は休んでゐる
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