結婚時代

室生犀星

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自分はやはり女性のことを考へる 自分にとつては幸福であり 救済の全てである女性を考へる その美しさを考へる その美しさの中の神に近いものを考える 自分はある女性を恋した いまそれを考へると その女性の中に自分の内映を見いだし その自分の力を恋したのであつた 自分はこのごろ初めて女性を見ることが出来 女性を恋してもよい年齢とに逢ひ 女性に対して立派な肉躰をもち 低級な情感をふりおとすことが出来るやうになつた 自分の輝いた男性を持ち 自分の仕事に自信をもち 自分の結婚時代に立派な姿で出会してゐる 自分はもう若くはない 自分のすることにあやふやなとこがない 死よりも強い孤独は迫るけれど いつもこれらをとりおさへることが出来 その沈静ならしめる用意がしてあるのだ 自分を愛し 自分とともに来るものは 幸福になり得るであらう 自分とともに苦しみを分つものは 永く永く魂の上に荒い海をかんじるであらう 世間ぢうの平和と 世間ぢうの飢饉とに出会するであらう

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