小鳥だち
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浅間山のふもとに
みどりの縁を取つたテニスコートが
昼もなほ露をふくんで
青い絹地のやうに畳まれてゐた。
すべつこいコートの肌の上に
白い珠の舞ふ綱張りのなかで
翼の色の異つた小鳥たちが走つてゐる。
私は毎日コートのそばへ出かけた。
ああいふ珠投げが人生にとつてどれだけ愉快であるか
まだ生れてから快活な遊びをしたことのない私に
あれらがどれだけ楽しいものであるかも知らなかつた。
私はただ舞ふ白い珠を見てゐた。
白い珠をへだてて
毎日ふたりの美しいあひのこが来てゐた
薔薇いろをした頬が日に焼け
みのつた杏のやうに汗ばみ
その白い小鳥はすばやく走つて行つたり
どうかすると天へ吊り上げられるやうに
珠と睦れ合ひ微笑つて
花のやうにコートのそとの緑を染めた。
コートのそとの緑草は珠をひらひに来たあひのこを
緑の葉を白い服にぺたぺた塗りつけ
まはりに集団まり
しばらく自分らのからだに翳してしまひ
その薔薇色の花を咲かせた。
娘はそれきり草場の中で
何かの願ひをきいてゐるやうに
身をうづめ匂へるだけ匂うてゐた。
私は又むつまじい親子をみた。
母と父とさうして娘とが隅の方で
しづかにコートの上を走つてゐるのが
影のやうに曳かれてゐるのを見た
娘は母親を、父親は娘をいたはりながら
白い珠のかげを趁うてゐた
外国人であるためか
それがさびしく心を捉へた。
雨の日はだれも来なかつた
真紅の襯衣をきた小鳥だちもゐず、
花の香のする麦藁帽も匂はなかつた、
ただ高原の冷たい雨がふるばかりだつた、
それが続いた九月はじめに
小鳥のむれはいつの間にか影ををさめた。
私は人かげ斑らな
美しい異国女の見当らないテニスコートに、
いつの間にか草が生えかかつてゐるのを、
冷たい雨の中で眺めた。
秋と冬と同時に動くこの山頂で
夥しい色鳥の空わたるのを聞くだけだつた。
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