何故詩をかかなければならないか

室生犀星

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自分は何故詩を書かずに居られないか いつもいつも高い昂奮から 火のやうな詩を思はずに居られないか 自分を救ひ 自分を慰め よい人間を一人でも味方にするためか ああ この寂しい日本 日本芸術のうちで いちばん寂しい詩壇 詩をかいてゐると 餓死しなければならない日本 この日本に 新らしい仕事をするため 父母をにへにし 兄姉にうとまれ 世の中よりはのらくらものに思はれ いつも不敵なる孤独に住み それでゐて一日も早く 人類の詩であるやうに わからずやの民衆を愛し いつまでも手をつなぎ合つて 毎日毎日仕事をしてゐる私ども 善くならう善くならうとする私ども ああ あらしが起り 波立ち 自分らの足もとを掻つさらつても むすんだ魂は離れない いまに見ろ この日本の愛する人人が 私共の詩を愛せずに居られなくなる よい暗示をあたへ 手をとるやうにしてゐるのだ みんなで楽しみ 相抱擁し それで初めてよい日本になりゐよう おれだちを生んだ日本を 私は先づ讃へるのだ そして根本から美しくなるのだ 吾吾詩人は餓死しさうで 餓死することがないのだ 飢えと寒さとは いつもやつて来るけれど 吾吾は餓死しない 生きてゆくことの烈しさよ おお 自分だちが詩をかくことは 生きてゆくことと同じだ おお

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