をさなき思ひ出

室生犀星

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1 おれはよく山へ登つた 山にはいろんな花がさいてゐた 気の遠くなるやうな深い谷があつた そこでよくねころんだ そのゆめのあとが ふいと今のおれの胸に残つてゐて 緑緑ともえてゐた 2 松並木は果もなかつた 僕はいつもとぼとぼと歩いて行つた そのやうに海は遠かつた 僕はいつも泣きながら歩いた 歩いても歩いても遠かつた 僕は海の詩をかいて都へ送つた あれからもう十年は経つて了つた 熱い日光を浴びてゐる一匹の蠅。此蠅ですら宇宙の宴に参与る一人で、自分のゐるべきところをちやんと心得てゐる。 フイドオル・ドストイエフスキイ

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