犀川の岸辺

室生犀星

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

茫とした ひろい磧は赤く染まつて 夜ごとに荒い霜を思はせるやうになつた 私はいくとせぶりかで また故郷に帰り来て 父や母やとねおきしてゐた 休息は早やすつかり私をつつんでゐた 私は以前にもまして犀川の岸辺を 川上のもやの立つたあたりを眺めては 遠い明らかな美しい山なみに対して 自分が故郷にあること 又自分が此処を出て行つては つらいことばかりある世界だと考へて 思ひ沈んで歩いてゐた 何といふ善良な景色であらう 何といふ親密な言葉をもつて 温良な内容を開いてくれる景色だらう 私は流れに立つたり 土手の草場に座つたり その一本の草の穂を抜いだりしてゐた 私の心はまるで新鮮な 浄らかな力にみちて来て みるみる故郷の滋味に帰つてゐた 私は医王山や戸室や 又は大日や富士潟が岳やのの その峯の上にある空気まで 自分の肺にとれ入れるやうな 深い永い呼吸を試みてゐた そして家にある楽しい父母のところに 子供のやうに あたたかな炉を求めて 快活な美しい心になつて帰つて行くのであつた

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

犀川の岸辺の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

犀川の岸辺に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる