良きもの深きもの

室生犀星

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自分の心はあせる 迅雷のやうに今日もあせる 良きもの 深きもの たえざる仕事による甘美なるものらに 烈しい完成を求める どうにかして幸ある どうにかして思ふ存分なものらに この自分を到かしめやうとするのだ この自分の喜んだ はればれした瞬間に触手しやうとするのだ 自分は凡てのものから圧力を感じる 凡てのたわいないものらにも 自分は悲哀を感じる この世の微塵にもほんとに自分を泣かせるものがある 凡ての良きもの 深きものらは つねに重大を自分に乗せつける 自分の力に苛責をこころみて来る 一日自分をやりこめる 自分の中に埋められた良き芽は だんだん試みられて育つ だんだんふとるのだ それらの良き芽は人心に燃え移り 生きかへり いかばかり楽しみ多い 悩みと革命とを生みつけることか いかばかり正しく いかばかり美事に輝くことであらうぞ ああ 良きもの 深大なるもの 美しく幸福であるべきものらに 自分は日に日にすすむ この平和の巣である自分の室に座り 心は迅雷のごとく燃え 燃え増さる このたのしさ! このたのしさの中に我が凡てはあるのだ

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