絶望

永井荷風

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絶望は老樹の幹のうつろより深し。 幾年月の悲しみ幾年月の涙。 おのづから心の奥の底知れず うつろの穴をうがちたり。 されど老樹は猶枯れやらず 残りし皮残りし骨に あはれ醜き姿を日にさらす。 屈辱にひしがるゝ老の身は 義憤にうごめき反抗に悶えて あはれいたましき形骸を世に曝す。 死は救の手なり虚無は恵なり。 吹けよ老樹にはあらし。 人の身には死よ。 されど願ふものは来らず 望むものは去る。 あはれあらしと死よ。

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