散文詩ローランサンの女達よ
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可憐なる夢幻の女性マリー、ローランサンの芸術よ、抒情と優美のマスクをかむつたかよわい闘士可愛らしい反抗者よ、そなたが描く男性を象徴した斑馬、女鹿、獅子、犬、すべての前生は詩人であつたといふ獣達は、女性の前には愚なる情慾の征服者で西班牙太鼓、六絃琴をもつたごきげんとり、少女等の玩具となり、夫人等の足を舐め髪の毛に接吻をする従僕であるといふのか、私はローランサンを愛する、そしてそなたが男性を皮肉な情慾の屈服者として玩弄物視したかよわい反抗を愛すると同時に男性の片割れとしてそなたの皮肉な芸術観にたいして地上に住むすべての女性にたいしてこの一文を贈る。
わたしの可愛いマリー、ローランサンの女達よきみらはいつたい何処から来たのだ、不思議な着物を着ていつの間に私等の踊りの仲間に入つてきたのか、低い口笛を吹き吹きそつとくちづけの真似をしたり横向きに白い肌をみせびらかして私等の足調を乱す気なのか、えたいの知れない蛇のやうな妖術者、君等は限界の広さに男を探り強くたくましき理智の展望台をもつた冷たき氷原をすゝむ南極探険船のごとく、または笑ひは海のごとく従順のしとねに眠る勝利者の凱旋歌、わたしの可愛いマリー、ローランサンの女達よ、きみらは手にした赤いペルシャ扇はなにか、それは情慾の焔をまぎらす風の扇だらう黒い眼鏡は妖婦のやうにくまどられ情慾の春画を覗く偽りの近眼病者、ぶらんとあへんに酔つたふりをする横着な舞踊役者。そつとしづかに介抱の手をまつ朝がたの泥酔であらう。
わたしの可愛いマリー、ローランサンの女達よ神秘と幻影の髪飾りはそのまゝにたゞ偽りのペルシャ扇を地に捨て軽い飛ぶやうな足どりでいらつしやい私はしつかりときみらを胸に抱き踊り踊りのあひまあひまに、おたがひがねば土の匂ひを嗅ぎあひませう、たゞ嗅いだばかりでも青春の幸福ではありませんかわたしは笑ひ笑ひのこのつたない散文詩の一篇を髪ながく色白のあらゆる地上のローランサンの女に贈る――一九二四、一――
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