潮騒

小熊秀雄

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日本の負担は 二つの波だ、 太平洋と、日本海と、 そこには激しい満干がある。 波は重圧な呼吸をして この狭い島嶼の上に ちかぢかとその白い顔を寄せる。 だがなんといふ親密な 母親のやうな海であらう。 夕方になると 私は足を濡らしながら 貝殻を拾つてあそぶ、 乾からびた魚や、 時にはヨーロッパの船具や 色の変つた砂粒など、 波の上には新聞紙が漂つてゐることもある。 殊によつたら日本は 磁力をもつてゐるのではないかと思ふ。 ヨーロッパの友よ、 君等の国から来た渡り鳥が 唯一の休息所である日本に降りた そして美しい一本の脱毛を私の紀念に やがてその脚裏には 日本の砂を密着させて出発した。 幾日目かに君達の庭に降り立つだらう。 入江の美しいのは 波の交流の激しさをかたり、 松の堅固なのは風が強いからだ、 友よ、ヨーロッパの友。 日本の不等な称讃を止めよ。 韻律の日本の実体は 海の潮騒のやうな 厳粛沈痛なものと知つてくれ。

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