滊車內の感傷

大谷忠一郎

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地上は 灰銀色の黄昏である 汽車は 私を暖國へ運んでゐた 乘り合した 人々の顏は 土色に疲勞し 冬の自然は 窓の外に 白い齒をむき出してゐる わたしは ふと 隣り合つてゐる 中年の男を見た その瞳は 黃昏の湖水のやうに さみしく 薄く禿げ上つた顏は 何んとなく惱ましさうである 私は思わず涙ぐましい心になつた その顏が- 死んだ父に たいそうよく似てゐるとは 不孝の子は 死んだ父の追憶にふけつた ーそのころ 私は放浪に憧憬れて いくにち 失踪を夢みてゐたことだろう 父親も 家庭も 親族も 友人も 周圍の人々が みんないとわしかつた ところが突然 父視は 私を家庭の暖かい寢台に殘して 自ら 失踪して了つた それは 悲しい永遠の死の國だつた 土壤の下に だんだん 變形し 消滅してゆく 父親を思ふと 堪らない しかし 死は永遠の謎だと 私は淚から逃れようとする ああ けれども淚は何時つきるだろう 隣り合した さみしい父の似顏 貴方も何時か死ぬときがあるんですね···

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