春の日の女のゆび

大手拓次

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この ぬるぬるとした空気のゆめのなかに、 かずかずのをんなの指といふ指は よろこびにふるへながら かすかにしめりつつ、 ほのかにあせばんでしづまり、 しろい丁字草のにほひをかくして のがれゆき、 ときめく波のやうに おびえる死人の薔薇をあらはにする。 それは みづからでた魚のやうにぬれて なまめかしくひかり、 ところどころに眼をあけて ほのめきをむさぼる。 ゆびよ ゆびよ 春のひのゆびよ、 おまへは ふたたびみづにいらうとする魚である。

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