白い髯をはやした蟹

大手拓次

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おまへはね、しろいひげをはやした蟹だよ、 なりが大きくつて、のさのさとよこばひをする。 幻影をしまつておくうねりまがつた迷宮のきざはしのまへに、 何年といふことなくねころんでゐる。 さまざまな行列や旗じるしがお前のまへをとほつていつたけれど、 そんなものには眼もくれないで、 おまへは自分ひとりの夢をむさぼりくつてゐる。 ふかい哄笑がおまへの全身をひたして、 それがだんだんしづんでゆき、 地軸のひとつの端にふれたとき、 むらさきの光をはなつ太陽が世界いちめんにひろがつた。 けれどもおまへはおなじやうにふくろふの羽ばたく昼にかくれて、 なまけくさつた手で風琴をひいてゐる。

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