薄暮
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いろやかに、にほやかに、ものの濕りと匂ひを
ひろがりゆく影のインク色にひたして
人はしづかに深みにかへる情熱を
大きい眼をもつてあたりいちめんに發射する
庭のむらさきなす紫荊の枝枝に
ひときは村のはてなる黒い檜の影へ
あきらかなりし空中のほむらを塗り
うすうすとにじみ來る透明なる「時」をかかげ
竹のあたりへおちる小さい響きを感じながら
もつとも色のない小さいオキザリスの花を
そのまつ毛のまつ先に捉へようとして
彼は音もなく煙のやうにひとり椅子から立ちあがる。
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