この非情なる寂寥こそ

佐藤惣之助

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村の高みへ思ひもえつつ歩み出ながら あたりの大氣と景觀にみつしりとうちしめり 曇り來れる四月の色と影をいつぱいにして はるかな村村の山から來る風と寂寥とに 思ふさまただひとり吹かれぬく事は 目に見える感じをとらへる以上に強い このあたりから吹き起る名もない寂寥こそ 西風がもてる地球のかすかな薫りであり 又われわれの思ひと官能を洗ひきよめる 生の極彩色の空中からの 神神しい情熱のもつとも深い幽麗な影と かるい愛情にぬれて村村へくる 水よりも直接でうつくしい生の瀧である われわれはこの力と清きつめたさのために われわれの惱みと切ない腐りを裁りさり 雨で洗つた枝枝のやうに勢ひをもりかへし 又われわれの生む事の出來ない自然の健康慾を しばらくでも身に飾り波うたせ 時間が畫く未來の美しい一角へすすみ入り 一歩一歩生の色どりを深め得るにちがひない。

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