さやかなる日影

佐藤惣之助

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遠くはなれて起き伏しする日は ちかく在る日にましてさやかなる情趣をかんじ ほんのりもゆる柚の花の木陰など歩みては 美しかりし夜を思ひ、香氣ある風に濕り 晝の月影の空氣に吹かれちるを眺めつ ほの青き金色とうす闇にもゆる葉かげの 午後のさびしき椅子を引きよせて うつとりとした情愛をかすかに清め 六月の庭の影をひとりたのしみながら 何にもまして夏の風をいつぱいにつけて 海からでも來たやうな色どりを引き 夕暮いろの感情にぬれて來る人を ただあてもなく待つてゐる。

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